自動記述による文章練習(メイン記事)

来年産まれる弟の子供が男の子だったら

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 来年産まれる弟の子供が男の子だったら 「極(きわむ)」という名前はどうだ?と弟にいったら すぐに却下された じゃあ他になにか候補の名前はあるのか?と聞いたら スラムダンクの三井寿からとって「寿(ひさし)」にするかもしれないと弟はいった 電話が終わって スラムダンクの三井寿の画像をネットで少しみてから 玄関の外の踊り場でタバコを吸っていたら 鮮やかな黄緑色の小さい蜘蛛が目にはいった 目を凝らしても糸はみえなかったが なんとなくここだと思った位置に タバコの側面を絡めるつもりで 右手を軽く横に押し当てた 慌てて糸をよじ登ることになった蜘蛛は しかしタバコがある真上の位置ではなく それよりさらに20センチくらい離れた向こう側の上のほうに 斜めによじ登っていった そのくせタバコを引くと その動きに蜘蛛はついてきた つまり糸は1本ではなく2本……いや それ以上の糸が上から垂れ下がっているのか?と思って 空中にもう一度目を凝らしてみたが 糸はやっぱり見えなかった タバコに絡んだ部分の糸がいつの間にか切れて 蜘蛛はそのまま斜めに 空中を泳ぐように ぼくから離れていった ぼくはそれを立ち上がって追いかけた といっても わずか半歩で蜘蛛の真上にきたぼくは 糸があると思われる位置に 今度は右腕ぜんぶを押し当ててみた 蜘蛛はぼくの手首よりやや肘よりの位置に 今度はまっすぐ登ってきた ぼくはその腕を斜め下に倒して ぼくの手の中のほうに蜘蛛がくるようにした 素直に手の中に登ってきた蜘蛛は ぼくの掌から手の甲を なんども高速で移動した ぼくの視線を嫌って蜘蛛がそうしているわけでもないと思ったのは 蜘蛛の動きを追う為に その都度回していた手を止めてもそうだったからだった やがて蜘蛛は腕のほうによじ登ってきた ぼくは息を吹きかけてそれを阻止しようとした それでもしつこく腕によじ登ってこようとする蜘蛛を ぼくはそのまま放置して部屋にはいった 小さくて色も綺麗な奴だったから 体のどこかに蜘蛛がついていることの気持ち悪さはほとんど感じなかった 弟は彼女の両親に「兄は芸術家です」といった 彼女の両親は「そうですか」といったきり ぼくのことをそれ以上触れなかった 彼女の実家はサザエさんの家の形に似ていた 庭の柵のむこうには道路が二つ……というか大きい一つの道路の真ん中の一角に 無理やり後付けしたように 二等辺三角形の形をしたスペースの変な公園があって それのせいで一見道路が二つあるように見えたのかもしれない サザエさんの家から ぼくはまずその公園までの半分だけ道路を渡った 公園には細い白樺の木が並んでいた 草陰のむこうで何かが動いた気がしてみると ぼくの片手に収まりそうなくらいの小さい子猫がいた 辺りを一通り見渡しても 親猫や飼い主らしき人は近くにいなかった ぼくが子猫に近づくと 子猫も近づいてきた しゃがみこんだぼくは 自分の股のあいだのすぐ手前にまできた子猫の頭を触ろうした しかし子猫は止まらないで そのままぼくの股の間をくぐり抜けていった 「あれ?」と思って振りむくと 子猫も同じような様子でぼくのほうに振りむいていた そしてそのときはじめて子猫の顔を正面からみたぼくは 子猫の両目が潰れているのをしった 振りむいた子猫が そのままふたたびぼくの股にむかって歩いてきたから 今度は行き過ぎて股をくぐってしまわないように ぼくは地面に完全に座りこんだ 子猫は潰れた両目を上にあげて「にゃあ」と擦れた声で1回鳴いた とりあえず水を飲ませようとしたが 公園の真ん中に水道はあっても それを入れる入れ物がなかった 「ちょっとまってろ」といって ぼくは一番近くのローソンまで走って紙皿を買ってきた 水をいれた紙皿を子猫の前におくと 子猫はその臭いを少し嗅いでから 何口か飲んだ それからぼくは子猫を抱きかかえようとしたが 下手にそうしてしまうとどこかの骨が折れてしまいそうに思ったから 右手で首の皮を掴んで持ちあげた それでやや前のめりの姿勢になった猫の尻の部分を さらに左手で支え持った 家につくまで 子猫は抵抗することなくずっとジッとしていた ぼくは歩きながら何度も子猫の頭の匂いを嗅いだ ぼくが幼い頃に実家で飼っていた猫も 荻窪のマンションで死んでしまったウサギも ぼくに頭の匂いを嗅がれることを嫌がらなかった ウサギはむしろ気持ちよさそうにしていた でも弟は嫌がった だから物心というか……弟が意思を主張するようになってからは ぼくはなかなか弟の頭の匂いを嗅ぐことができなかった 弟は ぼくが頭の匂いを嗅ぐ行為のことを「ヒャフ」と呼んだ 頭の匂いを嗅ぐときに 「ハフハフ」とぼくが口に出して発音するその声が 弟には「ヒャフヒャフ」に聞こえたからだった ともあれ弟にとって「ヒャフ」は嫌なことだったから 弟がなにか悪さをすると 「ヒャフするぞ!」とぼくは弟を脅した もしくはテレビゲームをしている弟に 「3分ヒャフしていいからこのボス倒して」といわれることもあった 父が弟と二人で車でどこかへ行こうとしたとき 弟が乗っていた助手席のドアが半開きで しかも父はそのことに気づかず そのまま車を発進させようとしたから ぼくは動きはじめた車に近づいていって「手ひっこめろ!」と弟に叫びながらドアを閉めた そのときの父の車の色は紺色だったと思う 確か「89」からはじまるナンバーだった 向かいに住んでいた新山は ときどきてんかんの発作を起こして救急車で運ばれていた 救急車に乗ったぼくは いわゆるたらい回しにされた 「ごめんね……もうちょっと待ってね」といった救急隊員に 「あ あ……はい……」と呻く感じでぼくは返事をした ようやく受け入れてくれた中野の病院で ぼくは一週間入院した といっても二日目にはだいぶ動けるようになったから 病院の廊下をちょくちょく歩いて病院内を探検した 窓から外をみても ここが中野のどこなのか?ぜんぜんわからなかった 「向かいのベッドの山本さんには食べ物を絶対あげないでください」と看護師の人にいわれた 山本さんは甘いものが大好きで ぼくの見舞いにきてくれた友人がもってきた菓子とかをやたら食べたがった タバコの灰皿から吸えそうなタバコを拾いとって 体をブルブル震わせながら「火を付けてくれ」とぼくに近づいてもきた といっても山本さんは声を出すことができなかった 紙に何かを書いて意思表示をするでもなく ぼくはただ山本さんの様子だけで山本さんのいいたいことを判断していた 山本さんはいつも帽子をかぶっていたが ある日その帽子をとった山本さんの頭をみてぼくはビックリした 前頭部の半分以上がベコっと窪んでいたからだった で その窪みにはソフトボールくらいの球がちょうど収まりそうな感じだったから 実際にソフトボールの球を山本さんの頭にはめ込んでみたら 山本さんは「ニコッ」と笑った――と ぼくがそうするのをたまたま見ていた看護師さんが 慌てて先生を呼んできて 次第に山本さんの周りが慌ただしくなったから ぼくはその場を離れて外にタバコを吸いにいった で タバコから戻ってきたら山本さんが死んでいて それはぜんぶぼくのせいにされた ぼくは裁判で勝つために フェチュコーウィチというロシアの有名な弁護士を雇った しかし裁判で負けてしまったぼくはシベリアに送られて 3年間強制労働をさせられた そこで出会ったドーロホフという悪人が 出所後もぼくに付きまとってきて 「だったらソイツをぶっ殺してやるよ!」とスモっちゃんにいわれたが 少し考えてから やっぱりスモっちゃんの申し出をぼくは断った ぼくはドーロホフから逃げて 杉林にはいった そこの獣道には所々に落とし穴が掘ってあって ぼくはその落とし穴のほとんどぜんぶに落ちた 一番深い落とし穴は5メートル近くあったと思う そこに落ちた衝撃でしばらく気を失っていたらしいぼくは やがて気がつくと 目の前が真っ暗で息もできなかった どうやら「西村」というぼくの知らない奴が ドーロホフにいわれて ぼくが落ちた落とし穴の上から土をかけているらしい声が聞こえた そう ぼくは生き埋めにされるところだった いや ぼくは生き埋めにされた しかしぼくは無事生還した どうやって生還したのかは記憶にない 生き埋めにされたそのすぐ後の記憶を辿ってみると どういうわけかピンポンダッシュをしたガキどもを追いかけている自分になる ガキどもは自転車で逃げたが まだ助走中だった一人のガキを ぼくは全速力で追いかけて捕まえた ぼくはお仕置きとしてそのガキに「ヒャフ」を1時間した そのガキはぼくに「ヒャフ」をされている間ずっと黙っていたというか ジッと安井の家があるほうのブロック塀をみていたが 別にそこに何かがあったわけでもなかった 

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